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2023.09.08 承継ニュース

【事業承継レポート】味も! 雰囲気も!想いも!しっかり引き継いで再開、そして未来への思い(うにめし食堂はらほげ)

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2022年秋、地域の人や観光客に愛されながらも惜しまれながら閉店した「うにめし食堂 はらほげ」。50年の歴史に一度幕を下ろした郷土料理店は、関東にある株式会社パッションアンドクリエイトにより引き継がれていくこととなりました。

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再び人が集い、賑わう店内

グランドオープン前の2日間、プレオープンとして店頭で1000食の「からあげ弁当」が配布されました。

2022年7月3日、グランドオープンの日。
近隣の地域、取引先、自治体職員の方々など、お世話になっている皆さんを招待した、オープニングパーティーが開催されました。開始時間である正午近くになると、続々とお客さまが集まり、あっという間に店内は満員に。

「はらほげ」の客間に人々が集い、久々に笑顔とにぎわいが戻ってきました。


ご主人夫妻が残されたものを丁寧に引き継ぐ

本日までのことを、承継された株式会社パッションアンドクリエイトの事業責任者である雑賀秀二さんにお伺いしました。
普段は東京にいらっしゃる雑賀さんですが、事業が動き出してからオープンの日まで、おおむね半分ぐらいの日を壱岐島で過ごしたそうです。
「準備が始まったのが5月中旬。6月頃にオープンのめどが立ち、そこからお弁当の無料配布の計画をして…。オープンはバタバタしましたけど、メンバー皆で楽しくやれたことが、何よりもよかったと思っています」

<株式会社パッションアンドクリエイト 雑賀 秀二氏>

店内は特別な改装は施されていないとのことですが、歴史が感じられる空間は居心地が良く、田舎のおばあちゃんの家に帰ってきたような、ほっこりした気持ちになります。

雑賀さん「古くてもしっかりと磨き込み、綺麗にしてお客さまをお迎えする準備を整えました。もとからあった装飾品はそのままで、ポスターを貼ったレトロ感を演出や、これまで培ってこられた良さもしっかり残しながら、新しいものも少し付け加えています」

5月中旬から今日まで、従業員さんのお仕事の大半は「掃除」だったそうです。
店の前で伸びていた草木を整えたり、お皿を一枚ずつ丁寧に洗って拭き上げたり、窓枠を一つひとつ外して掃除したり。本当に細かいところまで、皆さんで綺麗にしていったそうです。

倉庫にあった食器類も、お店で使うものは手入れをして厨房へ、使わないものは別の場所で保管されています。

名物「うにめし」の引継ぎ、お弁当や仕出しも復活へ

はらほげの名物といえば「うにめし」。しかし女将さんが作る「うにめし」には、今までレシピというものはなく、20年間働いた従業員さんでも、レシピをご存じないそうです。
それをどのようにして、引き継いだのでしょうか。
「女将さんに直接釜の前で作っていただき、その姿を見ながら、ご飯や食材の量などを伺い、都度メモに取ることで、レシピとして起こしていきました」(雑賀さん)
女将さんの経験のみに由来するものなので、感覚的なさじ加減の部分もあり、そこもしっかりと確認してレシピを作られたそうです。
「女将さんに新たに書き起こしたレシピで炊いた味を何度も確認してもらい、最終的にすべてのメニューに合格をいただけました」(雑賀さん)

看板料理の「うにめし」や壱岐島の海の幸を使ったお食事メニューはもちろん、お弁当や仕出しも再開しています。

「今朝は75食の弁当を作りました。現在の販売場所は3拠点程度ですが、ご要望も日に日に多くいただいているので、最終的には一日300食程度を目標に、拠点ももっと増やしたいと思っています」(雑賀さん)
お弁当に入っている「唐揚げ」も人気メニューの一つで、少し甘めの味付けで外側はサクサク。特徴的な独特の味付けに、ファンも増えているのこと。
弁当は、島内の道の駅やイオン壱岐店などで販売されています。

「はらほげ」と共に歩み、戻ってきた従業員たち

店内では従業員さんたちがてきぱきと元気よく動かれていました。
多くは、以前お店で働かれていた、元従業員さんたち。

「幅広い年齢層の皆さんに、一人ひとりができることを精一杯やっていただいています」(雑賀さん)

「私たちがどういう会社なのか、なぜこのお店を運営することになったのか、どんな思いで飲食店を作っているのか、おひとりずつ丁寧に説明して、一緒にもう一度働いていただきたい、とお伝えしました」(雑賀さん)

事業承継にあたって、女将さんは従業員さんの雇用の継続を希望されていました。
壱岐島内は運転免許がないと移動が難しく、店がなくなれば、車を持たない地元から通う従業員さんが働く場所を失ってしまうことを懸念されていました。
「大変なときに従業員の皆が助けてくれたことも多かった。だからなんとかしたい」
そう話されていた女将さんの心配はしっかりと解消されていました。

従業員さんにお話をお伺いすると
「長く働いていたので閉店は寂しかったです。でも今は期待でいっぱいです」
「別の仕事をしていましたが、お声がけいただいて、戻って頑張ろうと思いました」
「周りでもお店の再開を喜んでくれる方がいて、こちらもうれしくなりました」
「盛り付けが変えてみたり、新しいメニューも増えています。接客もまだ不安だらけですけど、たくさん教えてもらいながら頑張っています」
「また皆と一緒に働けるのがうれしいですね」
「お店だけでなく地元、そして壱岐自体が活気付いたら、盛り上がってくれたらいいなと思っています」

若い方から年配の方まで、皆さん前向きで元気に働き、気持ちも新たにお店を支えていくパワーとなっていらっしゃいました。

伝統と新しいものの融合 「はらほげ」のこれから

従業員さんもおっしゃっていた「新しいメニュー」。
その一つがオープンにあたって用意された新商品の「かき氷」。
東京で行列ができる有名かき氷店を手掛けた方の監修で、生いちごミルク・ほうじ茶ミルク・抹茶ミルクの3種類の味を用意しています。

かき氷はオープニングパーティーでも披露され、お越しになった方はテーブルに置かれた3種の味を分け合って召し上がられていました。

「こういうかき氷は初めて食べました」「ふわふわしておいしい」という感想が客席のあちこちから聞こえました。
お食事だけではなくて、おいしいかき氷を食べるために「はらほげ」に寄る、そんなお客さまが今後増えていきそうです。

最後に、同社の豊島堅太社長に、プレオープンからオープンまでの3日間を終えてのお話をお伺いしました。

豊島社長「関東が拠点の私たちが、はらほげのような伝統あるお店を承継することを、果たして地域の方に受け入れてもらえるのか、という不安がありました。しかしお弁当配布やレセプションを通して、このお店が本当に地域から愛されているんだと実感しました。
(前経営者の)三浦様の信頼もあって、皆さま快く受け入れてくださったと、ほっとしています」

<常に店内に目配りをされ、自らてきぱき動かれている様子が印象的な豊島 堅太社長>

これまで50年以上かけて築いてきた信頼と味、そこに新しいものを融合させて、今後も続く地域に根差したお店づくりをしたいと話される豊島社長。 今後の展開もますます楽しみです。