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赤字の老舗民宿が黒字へ転換!
一体どのように?
(うずしお温泉 寿荘)

2022年4月、旅館の一部を改装しワーケーション施設として新しいスタートを切った南あわじ市の老舗民宿「寿荘」。
旅館の再生と挑戦、その背景にはどんなストーリーがあったのかをレポートします。

誰もが想像しなかった「コロナ禍」。市役所の方の一言から、リコネル担当者が寿荘へ訪問

まだ日本が「コロナ禍」の中にあり、テレワークやワーケーションに注目が集まっていた2021年。リコネルの担当者・竹内は南あわじ市が主催するワーケーションモニターツアーに参加していました。その時に竹内は、既知の南あわじ市役所の部長さんから民宿「寿荘」がコロナで経営が大変な状況になっており、後継者もいなくて困っているという話を聞きました。「寿荘」の女将さんと以前より交流がある部長さんは、その状況をとても心配されており、竹内に一度相談に乗ってあげて欲しいと依頼してこられました。

その後、実際に「寿荘」を訪問した竹内。 民宿の2階には、窓から播磨灘を眺められる広々とした50畳の宴会場がありました。
宿泊と、自慢の料理でもてなす宴会の2つが売上の軸だったにもかかわらず、コロナの影響で宿泊は減っており、宴会場もほとんど使われていませんでした。

以前から徐々に宴会の機会は減っており、利用されることはほとんどなくなっていました。

「寿荘」があるのは、島の南東部で宿場町、漁業の町として栄えてきた丸山地区。以前は瓦産業もさかんで多くの人が働き、賑わうエリアでした。
しかし淡路島でレジャー開発が進む中、相対的に誘引力が弱くなり、今は目玉観光地もなく人もめっきり減っていました。
宴会場がいっぱいになるような利用方法は今後も見込めない…
今後の経営的な活路を見出すのはなかなか、容易ではないように思われました。

一件どこにでもある民宿?しかしそこには隠れた魅力が。どうやって「コネル」?

何の変哲もない、どこにでもある民宿…という第一印象を受けた竹内でしたが、何度も通ううちに、その隠れた魅力に気づいていきます。

万葉集に「御食国(みけつくに)」と詠まれ、古より新鮮な海産物、豊かな農作物に恵まれてきた淡路島。その中でも豊かな自然に恵まれた南あわじに位置する寿荘のお料理は、もともと宿泊予約系ウェブサイトのレビューでも高く評価されていました。
寿荘の目の前は海。近隣で漁業が盛んだったこともあり、新鮮な海の幸を生かして、鯛やハモ、3年とらふぐなど、都会では食べることができないお料理を季節替わりで堪能できます。

また、寿荘のお風呂は、すぐ近くの伊加利地区に源泉がある「うずしお温泉」のお湯をタンクで毎日運び込んで利用しています。
「うずしお温泉」はまるでローションのような泉質で、お肌がつるつるになることで人気の温泉。実は、日本三大美人の湯として知られる温泉よりも重曹の含有量が多く、その美容効果に多くのファンがいます。

そして一番に感じるのは、おかみさんご自身の気遣い、ホスピタリティ。
「古いけど掃除が行き届いている」「おかみさんの人柄がとても魅力的」
まるで「ただいま」といいたくなるような、アットホームで温かい雰囲気の接客も魅力の一つです。

何度となく寿荘を訪れるうちに、竹内はその想い、気持ちに応えたい、と思うようになりました。

「そのままでは大変だと思うが、掘り起こせる価値・可能性はたくさんあると感じた。活用方法はあるのでは」
「南あわじ」という場所が持つ魅力、寿荘の可能性を考えた時、一つの案が浮かびます。

「ここを、ワーケーションにしてみてもいいんじゃないか」

コロナ禍で広まった、テレワークやワーケーションという働き方が今後も続いていく気配がある中、宴会場をコワーキングスペースにして活用し、お料理や温泉、景色を楽しめるワーケーション施設として活用できるのではないか。

実現に向けてのハードルをどうクリアするか

しかし現状売上が少なくなっている寿荘にとって、新たな設備投資は大きな負担になります。そのため、財務面での負担をなるべく少なくしてワーケーションに改装できないかを検討していくことになりました。

コロナ禍において、国はテレワークに対してさまざまな補助金を出していました。
リコネルのチームで、ワーケーション関連の補助金を探していたところ「地方創生テレワーク交付金」という補助金に目が留まりました。
ただし、これは地方公共団体がプロジェクト計画を立て、内閣府がその自治体に対して出す補助金で個別の事業者から、国へ直接申請はできないというものでした。

南あわじ市へ問い合わせると、タイミングよく、現在申請しているという回答があり、近々、その補助金を利用して南あわじ市に企業や人を呼び込むことを目的とした、サテライトオフィス整備のプロジェクトが始まるという情報がありました。
市内に新しくサテライトオフィスとなりうる施設2件の新規募集を行い、選ばれた事業者に補助金が下りるというものです。

2021年の秋、そこに応募した寿荘は、見事に施設の1つとして選ばれることになりました。

この時のことを振り返って竹内は
「地域の人たちから見たときに余所者館がある、地域に入っていくところのハードルが高い。毎週のように現地に行っていた。」
「女将さんがいろんな人に相談したら、乗っ取りに来たんじゃないかと疑われて家族の方もなかなか最初は信用してくださらなかった。でも行政の方と一緒に動いていることで安心感は持っていただけたと思う」。

新たな挑戦へ 「RINC」という事業の始まり、バリューアップした寿荘

補助金を利用して改装を行った寿荘。
2023年春に「コワーキングスペース」」「ワーケーション」「サテライトオフィス」という一面を持った施設として新たなスタートを切ることになりました。
地域の人へのお披露目会には南あわじ市市長もお越しいただきました。
南あわじ市で他に採択された2施設と同じ時期にオープン。
その様子はNHKなどテレビでも取り上げられました。

リコネルの運営会社であるパンスールがクリエイティブ会社であることをフルに生かし、室内のレイアウトやデザインも手掛けてのリニューアル。
ブランディング、ワーケーションの運営、会員集めを実施することを機に新たに「RINC」というワーケーション事業を立ち上げ運営しています。

法人会員契約をメインとして会員を募集。クリエイティブ、ベンチャー、IT系の会社が多く契約しており、現在は法人約50組が契約、2件しかないサテライトオフィスの契約は常に満員です。

大広間を改装して出来上がったコワーキングスペースは、窓をより大きくとり、青い海と夕日の美しさを見られるようになっています。
窓に広がる海を眺めながらいいアイデアが出る、という意見もいただいています。
イベントやセミナーを開催したり、旅館であることで会員企業様が合宿を行ったり。
ワーケーションとの相乗効果で民宿としての売上も大幅にアップしました。

「普段来ることがなかった客層が旅館を訪れて、みんな『いいね』と喜んで帰られている様子がうれしい。新たな縁が生まれています」
「近くの旅館でも同じように改装してほしい、という要望をいただくことも」(竹内)

振り返って

順調な様子の「寿荘」。しかし今後、継ぎ手を探していくにあたって、まだまだやっていくべきことは残されています。

「行った人はいいねと言ってくれるけど現地で体験してみないとわからない。まだまだ魅力をしっかり発信しきれていないと思っています」
「エリアとしての魅力を発信し、コンテンツを充実させたい。例えば目の前の海で船に乗って釣ったばかりの魚を旅館でさばいて食べられるとか」
「淡路島に魚釣りに来る人は多い。近隣の漁業組合なども連携できれば」(竹内)

今後も寿荘の可能性はまだまだ広がっていきそうです。

<新しくなった寿荘については、こちらの記事とインタビューで紹介しています>
使わなくなった宴会場をワーケーションスペースへ。南あわじ市の老舗民宿「寿荘」が図る、再生と挑戦

#コネルレポート

コロナ禍という未曽有の状況に立ち向かったことで、旅館再生のサービスモデルが生まれた

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