地元に長く愛されるお惣菜屋さん。
父の想いを受け継ぎながら
新しい自分ならではの味にも挑戦!
「サンアレイ平野本町通商店街」は、大阪市平野区にある商店街。30店舗ほどが軒を連ね、生活に必要ないろいろなモノ・コトが揃い、地元の人の暮らしを潤しています。お惣菜の「きよの」が同地の一角に店を構えたのが、今から23年前のこと。店主の清野圭司さんは、祖父が始め、父が大きくした「きよの」を大切に守り、愛されるお惣菜屋さんにしてきました。
添加物は一切使わず、家族3人で守る味
煮物に、焼き物に、サラダ。ショーケースには、大皿に盛られた色とりどりのお惣菜が所狭しと並びます。その数、常時30種類。定番から季節感のある旬の一品まで、すべてが清野さんの奥さん、お母さんの3人の手作りです。
清野さん「毎日朝4時から出汁の仕込みを始めます。高野豆腐は味をしみこませるために一番最初に煮炊きしますし、エビ豆なんかは、前の晩から炊きますね。うちのお惣菜には添加物は一切使っていません。使用すれば楽になることは知っているんですが、『きよの』の味ではなくなるので」
ベースとなるのは出汁、砂糖、醤油。素材に合った割合を極限まで見極めています。そんなこだわりの姿勢は、毎日食べても飽きのこないやさしい味につながり、地元から愛されています。また、価格も200円(100g)前後に設定。昨今の材料費の高騰にも値上げすることなく、庶民に嬉しい買い求めやすいお惣菜を提供し続けています。
清野さん「最近は30代ぐらいの若い人も、よく買いに来てくれます。健康志向から煮豆を買っていかれる方が多いんですよ」
1日150~160人ほどのお客さんが訪れる「きよの」。意外にも忙しい時間帯は夕方ではなく、朝なんだとか。
清野さん「契約している食堂や老人ホームのおかずを用意するので、朝のほうが忙しいんですよ」
失って気づく父の偉大さと、自分がなすべきこと
「きよの」の創業者は清野さんの祖父。80年ほど前に公設市場で佃煮などを販売したのが始まりです。その後、清野さんの父の公三さんが跡を継ぎ、お惣菜屋さんを開業。現在の「きよの」が出来上がりました。清野さんは20代の頃からお店に入り、父を手伝ってきたと言います。
清野さん「昔は若気の至りで、父には反発ばかりしていました(苦笑)」
しかし、父親の偉大さを実感する日がやってきます。公三さんが病気で亡くなったのです。63歳でした。覚悟はしていたという清野さんですが、まだ30代。「見せて育てる」という父の方針もあって、お惣菜の味も経営についても吸収しきれていないことがたくさんあり、苦労したそうです。
清野さん「若くて経験の少ない私では、銀行などからの信用もありません。惣菜を作っても馴染みのお客さんから『前の味とちがう』と言われる日々が続きました。親父がいたから私も一人前に見えていただけなんだと、思い知らされましたね」
一念発起した清野さんは、レシピのなかった父の味を求めて奮闘。数年をかけて納得のいく「きよの」のお惣菜を“取り戻し”ました。
清野さん「親父の代からのお客さんに『おいしい』と言ってもらえることが一番嬉しいかな。でも、まだ親父に肩を並べたとは思っていないんです。コロナ禍にしても、こんな時に親父だったらどう店を切り盛りしていくんだろうと、思いを巡らせますね」。
お客様と自分に嘘をつかないことがモットー
ずっと父親の背中を追いかけてきた清野さんですが、様々な場面で、自身のオリジナリティを発揮しています。お惣菜のメニューもそう。レストランや料理屋に出かけて、気になる料理があれば、食材や和洋中にこだわらず、「きよの」のメニューに加えてきました。
清野さん「イタリアンを食べに行ったときに、アンチョビを使ったパスタが気になって。キャベツやしめじと合わせたお惣菜を作って、うちのラインナップにしました」
また、前述の食堂や老人ホームへの販路拡大も、清野さんの代になって確立してきました。穏やかな口調ながら、気力も十分という印象の清野さんですが、60歳を間近にしてお店の承継を考えるようになったと言います。
清野さん「立ち仕事で、寸胴鍋など重いものを持つことも多く、父が亡くなった年齢に近づいてきたこともあって、元気なうちにと考えるようになりました。父とはちがってレシピもありますが(笑)、守ってもらいたいこだわりが、そこまで厳しいわけではありません。しばらくは一緒に働きながら、基本を学んでいただいて、いずれ店を継いでくれる方を探したいなと思っています」
後継者に望むのは、「人が好きであるということ」。味を守ることよりも、接客業であり、店の前を通る子どもたちと気軽に挨拶を交わすような、地元に愛されてきた町のお惣菜屋さんという歴史を意識してもらえればと語ります。
清野さん 清野さん「私たちは、お客さんに信頼してもらうために、“嘘をつかない”ということをモットーにやってきました。それはつまり、自分に嘘をつかないということなんですね。後を継いでくださる方も、自分の納得する味、店を追求してもらって、愛される存在になってくれればうれしいです」。
#後世へ残したい企業
街のおかずやさん きよの
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