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地元の飲食店も愛用する
ここにしかないこだわりの食パンの魅力 
パン工房クランベリー

宮崎県の北東部にある日向市。日照時間が長く、夏には南国感あふれる気候が魅力的な街です。
「パン工房 クランベリー」は、有名な観光地「クルスの海」から車で15分、日向市駅から約1kmの住宅街の中にある創業26年のお店。人気商品の「食パン」は近隣の飲食店でも使われており、まさになくてはならない存在。懐かしく素朴なパンが並ぶお店で、ご主人の鶴田さんにお店への想いをお伺いしました。

こだわりの商品開発
地元との繫がり度

昔ながらの町のパン屋さんといった佇まいの店舗で出迎えてくださったのは、店主の鶴田泰夫さん。
67歳の鶴田さんはパンづくりから接客まで、すべてをお一人で切り盛りされています。

クランベリーならではの一品「食パン」(260円)は、パンの繊維が通常よりきめ細かく、もっちりふわふわした食感が人気です。
通常食パンは耳が薄すぎるとパンの重みに耐えられず「腰折れ」してしまいますが、クランベリーの食パンは腰折れしない限界ギリギリの耳の薄さを追求しています。この耳の薄さが、口当たりの良さにつながるそうです。

鶴田さんおすすめの食べ方はトースト。
外はさっくり、中はもちもちの食感がたまらないそうです。

お若い頃はインテリア関係の営業をしていた鶴田さん。
38歳の時、自分の結婚式用のケーキを作ってくれたお店のパティシエが作ってくれたフランスパンに衝撃を受けて、サラリーマンからパン職人になることを決意しました。
サラリーマンの時の収入は20万程度ありましたが、パン職人の修業時代は給料は出ず、収入はゼロに。
奥様の収入はあるものの、それに頼ってはいけないと深夜のカラオケ屋のバイトなどを兼業して収入を得ながら修行を続けます。

その後、念願かなって1997年に「パン工房 クランベリー」を開店。
しかし、開業当初はお客様が来ていたものの、3ヶ月を過ぎたころから客足が途絶え始め、1日に5~6万あった売上は約2万円前後に落ち込むこともありました。

起死回生の一手として当時50代の鶴田さんが行ったのは、焼いたパンを昼前から車に積み込んで外売りに回ることでした。市役所や保育園、警察署などを訪れて外売りを始めると徐々に固定客がつきはじめ、お店は軌道に乗っていきました。そこから約20年は地元のお客様にも助けられ、順風満帆だった鶴田さん。

しかし、2018年に鶴田さんのお父様が他界。遺産相続などの手続きに追われて店の定休日を増やして対応したことで、店を開けたくても空けられない日々が続いたそうです。

ちょうどその時期に、鶴田さんは店の借金を完済しますが…

「よかったなと思うでしょ?でもなんか張り詰めた緊張が切れたんですよ」
さらに追い打ちをかけるように新型コロナウィルスが発生。
コロナ禍以降、急に燃え尽きたように急に働く意欲をなくす人が増えていますが、鶴田さんも「燃え尽き症候群」になってしまいます。

後継者についてお伺いすると、
「子どもが継いでくれるのが一番いいのかもしれないんですが、パンに全く興味がないので…」
惜しまれつつ、2023年6月30日をもって閉店するということでした。

ご近所にある鶴田さん行きつけのハンバーグと石窯ピザのお店「KAMA-KAMA」にお伺いすると、店主の鎌田さんが「ハニートースト」で鶴田さんをねぎらいます。

「本当にお世話になったので…」と寂しげに話す鎌田さん。

この「ハニートースト」はクランベリーのトーストを使った人気のデザートメニューだそうです。
鶴田さんのパンの味は、地元の人からも本当に愛されています。

クランベリーの一日は朝6時の仕込みから開始。
時間がかかる食パン、フランスパンなどと並行して前日仕込んだ生地を使用して菓子パンや総菜パン作りをします。開店までの2時間を使って数種類のパンを同時進行して作っていきます。 パンが焼きあがり始める8時前には品出しへ。

開店直後から早速お客様が来られ、鶴田さんはパンを作る傍ら、お店での接客もご自分で対応されます。
お越しになった常連さんにお話を伺うと
「しょっちゅう買いに来ていたので、それがなくなるのはとても寂しいです…」
「食パンが大好きなので美味しくいただいています。また美味しいところを探さないといけないなと思って、残念です」
クランベリーの食パンを利用しているサンドイッチ屋さんは
「ショックですね、すごくショックで。また別のパンを探さないといけないので…私のキッチンカー専用でパンを作って欲しいと思ってるんですけど」

18時に営業終了。一日の売り上げ目標は5~6万円とおっしゃる鶴田さんでしたが、この日のお客様は30人、売上は約3万円でした。

今の場所で、住居と兼用の店舗を丸ごとお譲りする形で引き継ぎ、日向に味を残してくださる方を探されている鶴田さん。最後に、理想の後継者をお伺いしました。
「やっぱりパンの愛が大きい人がいいですね。でないと長く続かんと思うんです。」


#後世へ残したい企業

宮崎県-Miyazaki

パン工房 クランベリー

会社名

パン工房 クランベリー

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