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その日の朝に打った麺だけをこだわりの出汁で
元和食料理人が作るなべ焼きうどん
うどん屋 おたふく

日本の近代工業を支えた三池炭鉱やパナマ運河と同じ閘門式のドックを持つことで有名な三池港などの有名スポットがある福岡県大牟田市。
「うどん屋 おたふく」はその三池港から車で15分ほどの場所にあります。
朝早くからその日に使う分だけを粉から打って作るコシのしっかりした手打ちうどんと、こだわりの出汁が地元で人気のお店です。
炭鉱で働く人々で日々にぎわったというその魅力とお店への想いを、店主である北原さんご夫妻にお伺いしました。

1品に秘めるこだわり度
未来に残したいメニュー度

お店を訪れると、出迎えてくださったのは北原登美男さん・房子さんご夫妻。

「おたふく」の人気メニューは、鶏肉、玉子、アゲ、わかめなどたっぷり7種類の具材が乗った「鍋焼うどん」(750円)。使う麺は登美男さんが朝から手打ちで作るというこだわりの一品です。
数種類の素材をブレンドした出汁に、麺と具材を鉄鍋の中で一煮立ちさせたら完成。
昆布がしっかり効いた出汁には、しいたけや揚げから出る甘みも加わって豊かな香りが広がります。

ラーメンのイメージが強い福岡県ですが、県内のラーメン店が742軒なのに対し、うどん・そば店は1033軒。 実際はラーメンよりうどんが好きな人が多いと言われており、うどん店にとっては超激戦区となっています。

まだまだ元気で厨房に立ち、てきぱきと動かれている北原さんご夫婦。
大牟田市出身の登美男さんは中学を卒業後、大阪の料亭に就職して和食の料理人として腕を磨いてきました。
奥様の房子さんは大分県の出身で、同じ大阪の病院に看護師として勤務していました。

お二人の馴れ初めは有馬温泉。登美男さんが働く旅館に、房子さんがお母様と一緒に旅行で泊まり、その時に声をかけたことがきっかけでした。
房子さんは「優しい人で同じ九州出身の人だし、いいかなと」
その1年半後にお二人はご結婚。大牟田に戻って開業資金300万円で「おたふく」をオープンします。 開店当初、町のうどん店なのに高級和食店と同じ出汁の取り方をしていたため利益が出なかったというエピソードも。
それでも当時の大牟田は三池炭鉱で働く人たちで賑わっており、かけうどん1杯230円にもかかわらず、一日約6万円の売上があったといいます。

順風満帆な「おたふく」でしたが、11年前に登美男さんが病気になり、3人の姉弟がそれぞれの仕事を休んでお店を手伝うことに。東京にいた次女や息子さんが休職して協力してお店を守り、危機を乗り越えました。
しかし、そのまま子どもたちにお店を継がせる形にはしなかった北原さんご夫婦。

房子さん「仕事の終わりが夜12時ごろになるので…いつも子どもたちには寂しい思いをさせていたと思っていました」


「おたふく」の一日は朝7時、丼もの用のお米を洗い、火力が強いガス釜でご飯を炊くところから始まります。
続いて出汁の味付け。出汁は奥様にも触らせないとおっしゃる登美男さん。
丼物の出汁は鶏をベースにした少し濃いめの味付け、うどんの出汁はあっさり目ながら昆布の旨みを強く出すようにしているそうです。

休む間もなくうどん作り。水回し、生地をこねる、寝かす、足で踏む、伸ばす、切る…という6つの工程でつくります。
小麦粉に塩水を少しずつ入れなじませた後、その生地をしっかり腰を入れてこねます。

登美男さん「こねればこねるほど生地がしまってくるんですよ」
生地を寝かせた後、足で踏んでコシを出し、ローラーで生地を伸ばして専用の包丁で手切りします。
「おたふく」ではその朝に打った麺しか使わないため、営業日は必ず朝から登美男さんが麺を打ち、毎日約40人前を用意するとのことです。
「なかなかキツイですよ」と笑う登美男さん。

うどんの仕込みが終わると揚げ玉づくりを始めます。
房子さんは店の掃除。9時頃には出前の器の回収と買い出しに出かけます。
一日どのぐらいの売上を目指しているのか?とお尋ねすると
房子さん「3万円を超えると身体がくたびれますね、2人だけで回しているし、単価が単価なので…」

11時に開店して営業がスタート。徐々にお客さんが入り始めてお昼時にはほぼ満席になります。
いつもサクサクのてんぷらをお客様にお出しするために、揚げ物はすべて注文が入ってから揚げるのが登美男さんのこだわりです。
おたふくの一番人気は鍋焼きうどんですが、他にも「親子丼」や「肉うどん」「カツ丼」「カレーうどん」など人気メニューがたくさんあります。

ほぼ毎日来ているという常連さんは…
「お店がなくなったら困るんで…100歳まで働いてくださいって言ってるんですけどねえ」
ご家族で訪れたお客様は…
「寂しいですよね。いつまでも残ってほしいと思います」

夜9時に営業が終了。
この日の売上は35,000円、23名のお客様が来られました。

体力が続く限りは頑張るという北原さんご夫婦。

- あと何年ぐらいご夫婦でお店を続けたいですか?
登美男さん「いや、具体的にはないですね」
房子さん「私は4~5年は頑張るっていってるけど、どっちかが病気したら終わりかなと」

- どんな方にお店を継いでほしいですか?
登美男さん「料理経験者は却ってダメですね、自由に味を崩しきらないです。」
調理経験があると形にとらわれてしまうこともあるので、逆に経験がないほうが上手く行く場合もあるとのこと。
房子さん「商売人の奥さんは明るい人がいいと思いますよ。ぶーたれてたら雰囲気も悪くなるし」
明るく楽しい雰囲気でお話をされているのがとても印象的な房子さん。

手打ち麺とこだわりの出汁で作る「おたふく」のうどん。
これからもずっと食べることができるように残していきたい、そんな想いを持つ後継者を募集しています。

#後世へ残したい企業

福岡県-Fukuoka

うどん屋 おたふく

会社名

うどん屋 おたふく

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