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名店の味を受け継いだ
「南京ラーメン 黒門」。
唯一無二の豚骨ラーメンを残したい

豚骨ラーメン発祥の地とされる福岡県は、「全国屈指のラーメン激戦区」と呼ばれるエリアも多く、人気店の味を目当てに訪れる人が多い土地です。北九州市にある「南京ラーメン 黒門」もその一つで、一般的な豚骨ラーメンとは違う半透明なスープの味はまさに「唯一無二」。

今回は、そんなラーメン通をうならせる渾身の一杯を20年間つくり続けてきた店主の川内久門さんの想いや事業の現状について語ってもらいました。

噂の名店度
メニュ―へのこだわり度

豚骨の旨味をしっかり感じる半透明の絶品スープ

2003(平成15)年に福岡県の遠賀町で創業した黒門。現在は福岡県北九州市の若松区に店を移して営業しています。駅や中心街からは離れた住宅地の一角にある店舗ですが、連日開店前から何人も並ぶほどの人気店です。

川内さん「移転したのは駐車場を確保するためです。確かに立地がとても良いわけではありませんが、味には自信があったので、ラーメンの質が高ければ場所は関係ないと思っていました」

腕には覚えがあると語る川内さん。実際に黒門は有名グルメガイドに掲載されたこともあり、好調な客足が続いています。

コクがあり豚骨の旨味をしっかり感じる味わいでありながら、口当たりはあっさりとした半透明なスープが魅力。麺は中太麵で、スープになじむ茹で加減が絶妙です。

川内さん「澄んだスープは北九州でも珍しいと思います。ほかにも澄んだスープのお店はありますが、味はお店それぞれ。もともと黒門は『黒木というお店のラーメン』を目指して始めました。今も味を追求する毎日です」

心底ほれた名店「黒木」の味を残すために脱サラ

「黒木」は20年ほど前まで北九州に店を出していたラーメン店で、ラーメン食べ歩きを趣味にしていたサラリーマン時代の川内さんが「一番好きだった」という名店です。黒木の味に心底ほれ込んでいた川内さんは、その味を残すためにラーメン職人への転身を決意します。

川内さん「とはいえ、黒木さんは弟子を取りたがらない人でしたので、正確にいうと『弟子入り』したわけではありません。何度も店に通って『教えてほしい』とお願いしました。すぐには教えてもらえず、2年ほどして、ようやく仕込みを見学させてもらえました」

その後は「仕事の合間にラーメンを試作して黒木さんに味見してもらう」というのを繰り返し、2003(平成15)年に最初の店舗をオープン。店名は「黒木」と自分の名前である久門から取って「黒門」としました。しかし、開業直後は安定した経営ではありませんでした。

川内さん「開業当時はサラリーマン時代の手取りよりも収入が低くて、赤字が続きました。客足が鈍かった原因は思い通りに出汁が取れず、味が安定しなかったからだと思っています。苦しい時期でしたが、また黒木さんが仕込みを見学させてくれたので、それで味の見直しができました」

そうして開業から1年が経つころには客足も増え、経営も軌道に乗ります。

ところが2019年に入り、順調に商売を続けていた川内さんが心筋梗塞で倒れます。幸いにもすぐに病院に運ばれたため、1ヵ月で店に復帰できました。

自身の年齢やこうした病気も経験し、黒門の将来について考えることもあるという川内さんですが、現在も後継者候補は不在だと語ります。

「お金儲けではなく、ラーメンづくりの強いやる気と根性が大事」

川内さん「この場所まで来てくれる皆さま、黒門を選んでくれる方々のためにも、何とかこの味を残したいとは考えています。ただ、これまでも『ラーメンを教えてほしい』という希望者が来たことはありますが、なかなか続かずに辞めてしまうのが現状です」

川内さん「希望者には昼はお店を手伝ってもらいながら、『仕込みを見てもいいよ』と伝えていますが、仕込みにも参加すると、どうしても早朝からの長時間労働になってしまいます。そうなると1ヵ月くらいで辞めてしまう人が多いですね。昼の営業風景だけ見ていると『できそう』だと思うかもしれません。しかし、一番大変なのは仕込みです。それに、基本的な作業自体は毎日同じことの繰り返しで、そこまで高い収入も得られません。ですので『お金儲け』目的では続けられない場面もあります。とにかく強い原動力というか、やる気が必要なので、大切なのは根性と体力です」

希望者はいても、長続きしないと話す川内さん。実際、多くの人を魅了するラーメンをつくり続けるのは簡単ではありません。深夜3時から始まる仕込みではスープ以外にもメンマやチャーシューなどの準備があり、7時半ごろまで続きます。その後は休憩を挟み、開店準備が終わり11時になると営業開始。15時の閉店まで満席になることも多く、集中力も求められます。

「常に進化を求める」。全身全霊の一杯が多くの人を笑顔に

そんなラーメンづくりで、川内さんはどんな信念をもっているのでしょうか。

川内さん「自分が大切にしているのは『倦(う)まず弛(たゆ)まず止まらず』ということです。つまり『飽きたり、なまけたりせず、常に進化を求める』こと。それに毎日ブレなく味を保つのが大事。食べ物なので『おいしいかどうか』はお客様一人ひとり違います。結局は作り手である自分が納得できるかどうかだと思いますし、いいものをつくれば評価は後から付いてきます。」

川内さんのラーメンを食べた人たちは「家族でおいしいと思っているラーメンなので、なくなったら困ります」「こだわりを感じるラーメンなのが魅力。そのこだわりを引き継げる方がいてほしい」と話しています。

全身全霊でラーメンに向き合う川内さんの黒門とそのラーメン。遠方から来る愛好家だけではなく地域の人々も笑顔にする最高の一杯がこれからも食べ続けられるとうれしいですね。

#後世へ残したい企業

福岡県-Fukuoka

南京ラーメン 黒門

会社名

南京ラーメン 黒門

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