「あなたの夢をカタチにするものづくり」
確かな技術力で挑戦を続ける
淀川製作所

リーマン・ショックを契機にEV（電気自動車）開発事業へ

大阪の家電メーカーの下請け工場としてスタートした淀川製作所は、精密板金加工などを主な業務として、大阪のものづくりを支えてきました。緻密で複合的な加工を得意とし、製品化の企画・設計も担うプロフェッショナル集団であり、「大阪ものづくり優良企業賞2009」の特別賞や「大阪活力グランプリ2010」を受賞しています。

EV開発事業に取り組む契機となったのは、2008年のリーマン・ショックです。製造業も大きな打撃を受ける中、小倉社長は「踏み出さなければ、乗り越えていけない」と新たな挑戦を決断。複雑で高価なエンジンなどが必要なガソリン車と異なり、部品数も少ない電気自動車に目を付けました。

初めての製作は苦労の連続で、多くの失敗も経験。それでも諦めずに開発を成功させ、その後は「ロードトレイン」と呼ばれるレジャー施設に導入される電動遊具として、トレインタイプの車両も開発しています。こうした製品は安価な海外製も流通していますが、品質の高さが評価され、国内で一定のシェアを確保しています。

小倉社長はこうした大手メーカーが参入できないニッチな市場で、カスタマイズなどの顧客の要望をかなえられるフットワークの軽さと柔軟性が町工場の強みだと話します。

車いすの花嫁の夢をかなえる　ドレスを着たまま乗れる製品を

「どんなことも、まずはやってみる」「誰かの実現したいことを支えたい」と語る小倉社長ですが、難しい開発エピソードを話しながらも、どこか挑戦そのものに心躍っているような柔らかい表情を見せています。

そんな小倉社長は、EV開発以外にも、さまざまなものづくりに挑んできました。1980年代前半には電動アシスト自転車を開発。公道での扱いなど、当時の法整備の課題もあり、量産化は断念したものの、日本で初めてともされる取り組みでした。

また、2014年にはウエディング専用の電動車いす「Isco(イスコ)」を制作し、車いすが必要な花嫁がドレスを着たまま式に出られるという、これまで誰もできなかったアイデアを実現させています。

「Isco」はバージンロードでの花婿との身長差を解消する高さ調節機能、ウエディングドレスと一体化するデザイン、操作性と安全性の両立など、想定された全ての課題をクリアし、花嫁の夢をかなえました。
手探りの状態から約1年をかけて製品を完成させた小倉社長は「開発は大変だったが『まだ世の中にないもの』を作るのは楽しいし、やりがいもある。それに、自分たち以上に、車いすに合わせてドレスを仕立ててくれた仕立屋の方、おそらく日本初だと思われるこの試みをサポートしてくれた式場のスタッフ、全ての方々の協力があったからこそ実現できた。我々一人だけでは、できないことの方が多い。さまざまな業界が一緒になって取り組むことが本当に大切だ」と、当時を振り返ります。

面白いものづくりができる方へ創業100年へのバトンを渡したい

一人ひとりに寄り添ったものづくりを続ける淀川製作所。後継者の不在もあり、小倉社長は事業承継という方法で会社の存続を模索しています。「まずは創業100年という目標のバトンを次の世代に渡したい。ものづくりが好きで、実現したいビジョンや夢を持っている方と一緒に、守口や門真、地元大阪を大切にしながら進みたい」と小倉社長が語るように、淀川製作所は「なんでも作ってやる」という志を持って、楽しくものづくりができるパートナーを探しています。

今後は農工連携も進め、オリジナル野菜の生産や機材の開発なども見据える小倉社長。「誰もやっていないことをやるのが面白い。地域と共生できる町工場になりたい」と話します。

確かな技術と活力あふれるものづくり、そして誰かの夢をカタチにする情熱。大阪の産業を支えて きた淀川製作所のこれからが楽しみですね。