幻のそうめんとも呼ばれた
「淡路島手延べそうめん」。
150年以上続く伝統の味を残したい

細くコシのある麺が魅力。最高の味を目指してそうめんと向き合い続ける

淡路島そうめんは1830年代から40年代ごろにかけて淡路島で生まれたとされています。金山製麵の祖先が、奈良県の三輪に立ち寄った際に手延べそうめんの製法を学び、淡路島に持ち帰ったのが始まりで、福良に広まりました。まさに金山製麵が「元祖」といえます。

当時から漁師町だった福良では、漁に出ない間の副業としてそうめん作りが盛んになり、明治から大正時代には100世帯以上が製造するまでになりました。しかし、その後は近代化の影響や、各地の有名ブランド商品に押されて市場のシェアが低下。徐々に福良での生産量も減少し、現在では金山製麵を含めた10社ほどが事業を続けています。

「このままでは、淡路島そうめん自体がなくなってしまう」と感じた金山さんは、製麵所だけではなく、そうめんを食べられる食堂も経営。そうめんが淡路島の名産品だと知ってもらおうと行動しています。

金山さん「淡路島そうめんは、細くコシのある麺が特徴です。麺の生地を手作業で延ばす『手延べ』という製法で作られますが『麵を延ばして熟成させる』という工程を繰り返すので、完成には2日ほどかかります。一部の作業を補助するための機械は導入していますが、基本的には仕込みから完成まで、ほぼ全ての工程に人が関わって品質を管理しています」

手作業が中心となるそうめん作りを語る金山さん。生地は気温や湿度によって混ぜる塩の量を変え、熟成させる時間も微妙に変えているといい、機械を使って大量生産するそうめんと違った優しい口当たりになるように仕上げます。繫忙期は深夜２時ごろから作業を始める日もあると話し、一日中そうめんと向き合いながら、理想的な味や触感を追い求めています。

多くの人に食べてもらうためにも、豊富なアイデアを持った人とそうめんの活用を考えたい

金山製麵では、製造したそうめんを自社で販売しています。そのため流通管理や商品のパッケージ管理などは柔軟に対応できるといいます。商品の販売先は淡路島など西日本の一部が中心ですが、ここ数年は東京で販売したり、インターネット通販にも対応。全国に少しずつ淡路島そうめんのファンを増やそうと取り組んでいます。

取り扱う代表的な銘柄は『御陵糸（ごりょういと）』という明治時代から取り扱っているもので、のどごしがよく、麺のコシが強い人気商品です。御陵糸には贈答品として、そうめんが約18キロ入る大きな木箱入りタイプの商品がありますが、その木箱はなんと金山さんが手作業で釘を打ち、一つひとつ組み立てています。

金山さん「ファンを増やすためにも、経営している食堂と合わせて商品の活用・販売促進を見据えています。なので、そうめん料理のアイデア創出から、デザイン、マーケティング分野に知見のある方と協力できればうれしいです」

少し堅苦しいイメージのある贈答用のパッケージなども変えてみたい、と語る金山さん。製麵所が持っている技術を活用しながら、そうめんを作るだけではなく、食べるという視点からもアイデアを考えて、淡路島そうめんの未来を見据えています。

もっとおいしいそうめんを作り、淡路島そうめんを未来に残したい

金山さん「単純に『そうめん』といっても、産地や製法で味は変わります。淡路島そうめんも食べてもらえる機会を増やして、多くの人に味わってほしいです。夏の食べ物と思われているそうめんですが『にゅうめん』などのように、どんな季節でもおいしく食べてもらえるアイデアを考えたいと思います。まだアイデア段階ですが、そうめんを使ったスイーツなどができれば、面白いかもしれません」

さまざまなアイデアを話しながら金山さんは「とにかく大事なのは、もっとおいしいそうめんを目指して、これからも作り続けること。そして、次世代に淡路島そうめんを残すことが大切です」と語り、伝統を大切にしながら挑戦を続けています。

江戸時代から続く淡路島そうめんが、令和の時代にどんな進化を遂げるのか楽しみですね。